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2023/12/22 その他 IML Track20 龍星群

 

 

風は見えなくても風車は回る

音楽は見えなくても心に響く

J.S.バッハ

 

 

 

 

 

Track20 龍星群

 

 

【『琴』と『箏』は一緒でしょう?】
という話を聞きますが、実は全く違う楽器です。
「箏(こと)」は、柱(じ)と呼ばれる可動式の支柱を使って、音の高さを調整し音程を変える楽器で、「琴(こと)」は、柱はなく、ギター等のようにポジションを指で押さえて音程を変える楽器です。大正琴は「琴」の分類になります。
この認識違いが起きてしまう原因は、言葉の歴史が関係してきます。日本語の古い言葉では、弦楽器をすべて「琴(こと)」と呼んでいました。源氏物語にも記述がありますが、多種ある弦楽器を区別するために、「箏の琴(ソウのこと)」「琴の琴(キンのこと)」「琵琶の琴(ビワのこと)」と言っていたそうです。月日が流れ、「琴の琴」が少しずつ流行らなくなり、楽器として廃れていきます。そして、人気が健在だった「箏」と「琵琶」が【~の琴】という言葉からの独立を果たします。この時「箏」はソウではなくコトという名前で独立してしまいました。「箏」はつい最近まで常用漢字ではなかったので、【琴】という漢字をあてて読む時代がとても長く続きました。今は「箏」も常用漢字ですので、知っている人は「箏」を使う→世間に認知してもらう、「琴」も「箏」も間違いではないよ、という過渡期かと思います。

以上のような背景がある中、2012年、ジャンプスクエアから『箏』をテーマとした学園漫画『この音とまれ!』釧路出身の作者アミューさんによって連載が始まり、累計発行部数は550万部を突破していています。作中には古典曲からオリジナルの曲まで多種多様な箏曲が登場しており、2017年には作中に登場する箏曲を収録したCDがリリースされました。純邦楽は千枚でヒットといわれる中ですぐに1万枚以上を売り上げ、文化庁芸術祭で優秀賞を受賞しています。2019年にTVアニメ化されました。

舞台となる時瀬高校箏曲部は、先輩たちの卒業により廃部寸前。ただ一人の部員となってしまった主人公の武蔵は、新入部員集めに苦戦していました。しかし、そこへ見るからに不良そうなもう一人の主人公、愛(ちか)や箏の天才であるヒロインのさとわ、愛の友人達が入部したことで状況は一変します。部員不足による廃部の危機からは脱しましたが、愛のことを快く思わない教頭が箏曲部の廃部を目論んだため、半分以上素人である部員たちは部の存続を懸けて、1か月後に全校生徒の前で演奏を披露することになります。

その時に演奏したのが、今回紹介する作中オリジナル楽曲の「龍星群」です。アミュー先生の姉でありプロ奏者である橋本みぎわさんが作曲しました。漫画になった時点では架空の曲だったのですが、その内容に合わせて完全再現された曲です。観客であり審査員となる全校生徒は「俺らまで巻き込むなよ」「正直どうでもいいよね」「俺らの貴重な時間使ってつまんねぇ演奏聴いてやるんだからよー」と最初から否定的ですが、そんな空気を一瞬で変えるトレモロからの十七弦の一音はまさに「ダァン」という音がします。強弱がハッキリしていて、”強”の部分では龍がもつ力強さ、絶対的な存在感が表現され、鳥肌が立つほど音が重く響きます。また”弱”の部分では、動画内でもその1コマが出てきますが、楽器屋のおばあちゃんの言うとおり「仲間のいない孤独な龍の鳴き声」のような音が響きます。そして、亡くなってしまったおじいちゃんに届けと願った音は優しくて芯があり、すべてを包み込んでくれます。ソロ終了後、クライマックスでは6匹の龍が渾然一体となって観客に襲いかかってきます。

2014年に期間限定で楽譜が無料ダウンロードとなり、YouTubeを通して「龍星群コンクール」が実施されることとなりました。さらに、2017年に楽譜集が発売されると瞬く間に売れ、今ではちょっとしたイベントから学祭、コンクールまで幅広く演奏され、愛されています。また、この公式動画には日本語はもちろん英語や中国語、韓国、ポルトガル、インドネシア、フランス、スペイン、トルコ、ギリシャ、タイ、ロシア、アラビア語…と世界中の言語での賞賛コメントで溢れています。

 

体育館に集まったほぼ全員が経験した、箏の、インストゥルメンタルの印象が激変する衝撃を是非味わってください。

箏5・十七絃の六重奏「龍星群」 演奏は1:40~

 

 

 

 

 

いかがでしたか。


『龍っていうのは天と地、あの世とこの世、結ばれない二つのものをつなぐ存在なんだって。だから、その龍に見立ててつくられた箏は、弾く人と聴く人の心もつないでくれますようにって願いが込められてるんじゃないかと思ってる。』

『なんのために弾くのか、誰に届けたい音なのか、ちょっと意識するだけでも音色はガラリと変わるもんだよ。大事な人に大切な言葉をなげかけるように弾いてごらん。音は言葉で上手く気持ちを伝えられない人のためのもう一つの言葉だよ。不器用で誤解されやすいあんたたちにぴったりじゃないか。』

 

“音楽”という意味で
本当に素晴らしい演奏というのは
専門家を越えてその先にいる
何も知らない素人に届くものです。
言葉も通じない文化の違う相手にでも
心が届く

 

きっと皆さんの心にも届いたと思います。 
もっと感動したいという方は、
原作の1~3巻を読んでみて下さい。 

 

箏5・十七絃の六重奏「龍星群」
作曲:橋本みぎわ(作中では綾瀬タキ名義)
1箏・いぶくろ聖志(久遠愛)
2箏・光原大樹(足立実康)
3箏・本間貴士(水原光太)
4箏・中島裕康(堺道孝)
5箏・木村麻耶(倉田武蔵)
17絃・橋本みぎわ(鳳月さとわ)

 

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